2016年 新作映画ベスト30
年末恒例の振り返りの記録、ラストのその5 新作映画編です。
今年は一気に30本いきたいと思います。
昨年のベストはこちら。
過去のベスト作品は以下のとおり。(過去記事へのリンクです。)
2015年『恋人たち』
2014年『ゴーン・ガール』
2013年『ゼロ・グラビティ』
2012年『アルゴ』
2011年『ブラック・スワン』
2010年『(500)日のサマー』
今年の劇場鑑賞本数は135本、その中からのトップ30です。
各作品のポスターに予告編がリンクしてあります。
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30位『何者』(三浦大輔)
『何者』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年10月19日
安易にtwitterでつぶやくことを躊躇うくらいのSNSと自意識のお話。悪い意味ではなく、映画的快楽やカタルシスはほとんどなく、じわじわといたぶるタイプの映画。予告編のような音楽と編集の気持ちよさを期待すると戸惑うかも。ともあれ、画面いっぱいド迫力の有村架純を括目せよ!
『何者』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年10月19日
原作者の朝井リョウさんと同学年・同大学なので、あまりにも自分の経験と切り離すことが到底できなかった。だからこそ、あのSNSの感じは凄くわかる反面、今の感覚だともう古い感覚なのかなとも。
作品の撮り方や演出に関してはもっといい作品もあったけれど、あまりにも自分の人生と切り離せない作品でした。
29位『マジカル・ガール』(カルロス・ベルムト)
ヨーロッパ映画でたまにある非常にドライで底意地の悪い映画。何が起きたかを敢えて見せず、観客の考えうる“最悪の事態”、それ以上のコトを想像させる演出が良かったなと思います。
28位『ロブスター』(ヨルゴス・ランティモス)
前述の『マジカル・ガール』同様、本当に底意地の悪い映画だな、と。恋愛をしなければいけない環境では対象には巡り合えず、恋愛をしてはいけない環境で恋愛対象に巡り合ってしまう。今後も性格の悪い映画を撮り続けてほしい。
27位『ヴィクトリア』(セバスチャン・シッパー)
『ヴィクトリア』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
TIFFで話題になった140分ワンカット。脚本的な目新しさはないものの、編集から溢れる落ちるような時間を連続して観られるのはやはり新鮮。個人的なハイライトは、二人乗りの自転車で無人の夜の街を行くシーン。『オスロ、8月31日』にもあって、なぜだか無性に泣けてくる。
機材や技術の進歩でワンカットに見せることはそんなに困難なことではなくなり玉石混交いろんな表現が出てきましたが、しっかりとワンカットの必然性がある映画だったと思います。まさに一夜だけの悪夢。
26位『胸騒ぎのシチリア』(ルカ・グァダニーノ)
『胸騒ぎのシチリア』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
ロックフェスのタイトルバックから始まり、言葉だけ交わされない2人だけのバカンス、iPhoneの着信音と飛行機の轟音、そして、空港に降り立つ元夫。冒頭、これらのシーンの流れだけで2人の関係性とこれから起きることの不穏さを暗示していて凄く映画的で巧いと思った。
25位『溺れるナイフ』(山戸結希)
『溺れるナイフ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月8日
劇中、小松菜奈が「君となら遠くに行けそう」と言われるけれど、山戸監督が自分にとってはまさにそんな感じだなぁ。何か凄いもの、見たことない景色を見せてくれるんじゃないかという根拠のない期待を抱いてしまう。
『溺れるナイフ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月6日
もはや王者の風格さえ漂う菅田将暉と小松菜奈は正義。そしてこの2人以上に、映画の中で「普通」を一手に担った重岡大毅さんが大発見と言わんくらいに良かった。個人的ハイライトのカラオケシーン、映画であんな笑い泣きしたのはここ数年で1番だと思う。
『溺れるナイフ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月6日
他にも小松菜奈の母親役に市川実和子という絶妙なチョイス、音楽、編集の2010年代ぽさとか、これがシネマライズのクロージングだったらなぁとか、いろいろと思うところはありました。
24位『ヤクザと憲法』(土方宏史)
『ヤクザと憲法』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年3月31日
ヤクザの人権と憲法の矛盾を突いたドキュメンタリー。何が正義で何が悪か、国外やフィクションだけの話じゃなく、日本にも確かに存在する問題なんだなと。そんな問題意識もありつつ、単純にヤクザの日常を捉えたドキュメンタリーという観点でもメチャクチャ興味深かった。
今年のドキュメンタリーではナンバーワンでした。出てくる人物がみなチャーミングで、実在する「人」を最も丁寧に捉えた映画だと思う。結局のところ、この世界に正解などないことを示唆する作品こそが優れたドキュメンタリー、映画、作品であるのかなと。
23位『オーバー・フェンス』(山下敦弘)
『オーバー・フェンス』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年9月18日
自分の中の蒼井優像が久しぶりに更新された。この蒼井優が観たかった!と心の中で叫び続けていました。脇の役者さんもことごとく良いわけで。とりわけ勝間田さん役の鈴木常吉と、ピンポイントの優香が蒼井優に全く引けを取らない存在感なのには驚いた。
運動する蒼井優が久しぶりに観られるだけで一見の価値あり。確かにドン詰まりの話ではあるのだけれど、ものすごく抜けのいいラストだったなと思う。草野球が出てくる映画『3-4x10月』の他にも良作があったような。
22位『グランドフィナーレ』(パオロ・ソレンティーノ)
『グランドフィナーレ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
パオロ・ソレンティーノの構図、編集、音使いここに極まれり。どうしても21世紀のフェリーニと形容したくなる。直線的で、人工的な美しさで溢れている浮き世離れしたホテル。そして、その対極にあるマイケル・ケインの緩みきった、あるいは、熟成された肉体の曲線美よ!
『グランドフィナーレ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
バカンス映画とはまた少し違う、 休暇なんだけど登場人物が決して大騒ぎはしない #保養地映画 というジャンルを個人的には推していきたい。『グランドブダペストホテル』『パラダイス 愛』『フレンチアルプス〜』等々。
21位『退屈な日々にさようならを』(今泉力哉)
『退屈な日々にさようならを』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
これまでの今泉監督の会話劇や群像劇といった部分は引き継ぎつつ、「死」というテーマが差し込まれている。「いないままでいること」と「死んでしまうこと」、どうなることが最良なのかと思考が行ったり来たりしていた。
『退屈な日々にさようならを』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
そんな「死」についてあれこれ考えてしまったとしても、後味が決して重くない。それはいい意味で緩くて低体温の会話がきちんと可笑しくて、バランスをとってくれているからだと思う。やっぱり今泉監督の描く日常や男女のやり取り(パンの件!)は延々と観てられる。
今泉監督作品、今年は『知らない、ふたり』もありましたが、こちらをチョイス。「死」と「好き」と「日常」とほんの少しの「ユーモア」が地続きになっていることを改めて実感させてくれる作品。今泉監督、売れてくれー!
20位『ひそひそ星』(園子温)
『ひそひそ星』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
何度も福島を撮った園子温だからか、異星の地として描いたのは3.11と映画のいい距離感を保てているように感じた。タルコフスキーよろしく、最小限の音と動きで、自然と観客の画面への集中力(あるいは眠気)が高まっていく時間は非常に贅沢。ここ最近の園子温作品の中ではベスト。
福島の風景にほんの少しの演出を加えることでSFとして成立させたことに、園子温の地肩の強さを感じた。来年公開の『アンチポルノ』、冨手麻妙さん主演ということで否が応にも期待値が高くなる。
19位『コロニア』(フローリアン・ガレンベルガー)
軍事クーデターに巻き込まれ拉致された彼氏を隔離された狂信的な施設から救うお話。閉じた世界の異常性、教祖の子供に対する嫌悪感ばっちりのイタズラ描写、最後の最後まで飽きさせないエンタメ映画としてのサービス精神と、凄く自分好みの作品でした。
『ちはやふる』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年4月2日
各所の評判を聞いて鑑賞。努力・友情・勝利と三拍子揃った青春チームものとして面白かった!漫画特有のギャグやシーンを無理に再現しておらず、テンポが悪く感じることは一切無い。日本の大作映画をストレスなく鑑賞したのは久々かも。これで2部作の必然性がある後編なら文句無し。
『ちはやふる 下の句』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
松岡茉優が登場シーンからして独壇場。前後編通じて描いてきたチームや絆を背負った広瀬すず。そういったチームとは無縁の松岡茉優。その戦いは映画的にも、若手女優対決的にも見応え十分。試合後、2人が交わすやりとりの言葉数の少なさが映画自体の品の良さだと思う。
『ちはやふる 下の句』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
百人一首が緊張と緩和の競技というのも、映画の演出にもきっちりハマっていたのではないかと思います。それと久しぶりに良い國村隼でした。
やっぱり机くん推し。登山シーンのカットバック繋ぎは年間通じてもベスト級の編集。だからこそ、下の句での机くんの背景化が少し物足りなかった。
17位『二重生活』(岸善幸)
『二重生活』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
尾行が題材だけあって、都心を舞台にした「見る/見られる」「追う/追われる」の関係性だけでも非常にスリリング。されど本筋は3組の男女の話。それぞれの絶対的に満たされない、何か大きなものが欠落している関係性を、違う切り口で描いて1つの地点に収束する過程も面白かった。
『二重生活』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
あと何はともあれ門脇麦。頭も良くて、同棲もしているんだけど、本物の大人(長谷川博巳、リリー・フランキー)を前にするとしどろもどろになってしまう大学院生の佇まい、未成熟感が「いる人」だった。宣伝には全く出てこなかった河合青葉、西田尚美も良かったです。
『二重生活』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
他にもセックスが中断される映画はやっぱり外れないよなぁと思ったり、本当に怖いのは管理人のおばちゃんのような自身の善意への疑念を抱かず、そのややこしさ、煩わしさに全く無自覚な人だよなぁと思ったり。
16位『太陽』(入江悠)
『太陽』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
ディストピア、ドラキュラ、分断された世界と邦画ではお目にかかれない要素が多い。中でも島国の日本で国境のある映画を観られたのは嬉しかった。近藤龍人さんによる空間の見せ方がハイレベルなおかげで、設定が崩れるどころか、文明の退化した村や近未来の日常に充分な説得力がある。
『太陽』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
『SR』でよく観た入江監督お得意の長回しも要所要所で効果覿面。役者陣はラストの門脇麦の変貌っぷりも良かったけれど、何と言っても古館寛治さんの不器用な父親が素晴らしかった。入江監督の新しい代表作と言っても全く言い過ぎではないと思います。
15位『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二)
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年3月26日
180分の長尺に身構えたものの長さは感じなかった。ここまで世界を信じている映画が久しぶりだった感覚。初めてリアルタイムで岩井俊二監督作を観れたのは嬉しかったな。
『リップヴァンウィンクルの花嫁』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年3月26日
2010年代の東京でお伽話を撮っただけで、充分に意味はあるのかなとも思った。黒木華は昨年の出演実写映画のうち4本が教師役で、今作でも教師役。黒木華=教師役のイメージがついているわけでもなく、それぞれの作品で違うキャラクターの教師なのが凄い。
綾野剛のキャラクターがどこかで裏切るだろうと思うような軽薄さで、最後まで胡散臭いだけの人というところが凄く象徴的だな、と。結婚式の余興シーンは、今年一番(良い意味で)悪寒が走った迷シーン。
14位『父を探して』(アレ・アブレウ)
『父を探して』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年3月31日
ブラジルの可愛いアニメーションかと思いきや、それまでの視点が劇的に変化するラストの展開に驚いた。父と子の物語で言えば、『アーロと少年』と比較すると規模や手法は違えど、少年の未知の世界への冒険と発見が共通し、その反面で製作国の歴史が反映された世界観の違いが面白い。
『父を探して』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年3月31日
セリフが一切ないので、音楽の良さが一層際立つ。サントラが欲しいところ。
Emicida - Aos olhos de uma criança (trilha sonora de O Menino e o Mundo) https://t.co/JhtRENiaFV
13位『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(アダム・マッケイ)
サブプライムローン崩壊の裏側で大金を稼いだ男たちの物語。中盤から終盤にかけて全く物語が進まず、観ているこちらがヤキモキしてしまう。結末も全く後味が良い映画ではないけれど、その苦さが凄く“リアル”。
12位『クリーピー 偽りの隣人』(黒沢清)
『クリーピー 偽りの隣人』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
日本の当たり障りのない空間をホラーに仕立て上げる技術はもはや伝統芸能の域ではなかろうか、と。それでいて「あの部屋」の登場で、観客を困惑のど真ん中に放り込んでくれる黒沢清には全幅の信頼を。違和感だらけな日常のやり取りのとかどう演出したんだろう。
『クリーピー 偽りの隣人』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
西島秀俊、香川照之は分かるけど、竹内結子、藤野涼子が黒沢清作品にハマっていてびっくりした。お話の構造がわかるまではこれまでのイメージ通りの竹内結子だったけど、こちらの気付かぬうちにじわりじわりヤバい方に足を突っ込んでいく過程がお見事。
11位『アメリカン・スリープオーバー』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル)
『アメリカン・スリープオーバー』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年9月4日
青春という名の「何の奇跡も起きない神話」について。かつて「神話」を過ごした大人の彼らを捉える視線は、優しく、温かい。ラスト、当たり前のように大人たちがいるパレードの喧騒で、大人が不在のあの一晩こそ彼らの「神話」であり、「青春」だったと気付く。
『アメリカン・スリープオーバー』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年9月4日
映画が終わって外に出たらちょうどお神輿が出ていて、ワッショイワッショイやってた。劇中の夏の終わりの空気感とパレードの喧騒が重なり、どこか映画がまだ続いているような偶然に感動してしまった。
『イット・フォローズ』も良かったデヴィッド・ロバート・ミッチェルの長編デビュー作。誰もが過ごした時間、青春といわれる時間を指して"Myth"と言っちゃうことがカッコいいなと思います。
10位『サウルの息子』(ネメシュ・ラースロー)
映画のほとんどが主人公の後頭部の画角なので、主人公の視点からアウシュビッツを見ることになる。見せるところ、見せないところの取捨選択がいちいち秀逸、去年の『野火』に並ぶ戦争という名の地獄巡り映画。
9位『オデッセイ』(リドリー・スコット)
どんな危機的状況においても、楽しみと理性を失わないこと。その一点に貫かれた作品。世界レベルの頭脳が、しがらみ抜きに協力するところも本当に良い。『悪の法則』と同じ監督とは到底思えないくらいポジティブな世界。最終的に誰も死なないところも好きだし、最後のワンカットからエンディングへの切れ味も最高。
『シン・ゴジラ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年8月1日
無駄がなくテンポの良い会話劇、日本のお役所的・政治的なしがらみ、東京という都市の描写、日本を舞台にしたディザスタームービー。ここ最近の日本映画できちんとやっていなかったことを一通り抑えているんだから、つまんないわけがないよね。
それぞれがそれぞれの役回りを全力でこなすことで1つの大きなプロジェクトを完遂するエンタメ映画、その点では『オデッセイ』と共通している。あと、映画で東京が本当に崩壊して絶望的な感情になったのは初めてかもしれない。壮大な避難訓練映画でもあるよね。
7位『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ)
『シビル・ウォー』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月22日
ルッソ兄弟の手腕が冴えまくり。個々のキャラの関係性を提示しつつ、全員に見せ場を作って、それでいて楽しい空港でのオールスター戦。内戦にフォーカスして映画としてのカタルシスがほぼないのも、今っぽいし、『キャプテンアメリカ』シリーズっぽい。断然、支持派です。
MCUを一通り観てきた人からしたら、ご褒美のような映画でした。今年の『デッドプール』然り、『ドクター・ストレンジ』、『GUARDIANS OF THE GALAXY VOL. 2』、『スパイダーマン:ホームカミング』 とこれだけ作品出しておきながら、全く質が衰えないことが驚異的。
6位『ドント・ブリーズ』(フェデ・アルバレス)
『ドント・ブリーズ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年12月23日
史上最恐のだるまさんが転んだ映画。90分切ってるので気楽に観られると臨んだら、これ以上長かったらハートが持たないと思うほどでした。1番最初のショックシーンが1番驚いた。ココは来ないだろうと安心しているところの不意打ちだし、お前かよって驚かせ方だし。
『ドント・ブリーズ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年12月23日
『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』あたりから今年の『イット・フォローズ』と、デトロイトが映画の舞台としては盛り上がってる印象。それとあの部屋は『クリーピー』の隠し部屋を彷彿とさせますね。良い部屋ですよ。
5位『海よりもまだ深く』(是枝裕和)
『海よりもまだ深く』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月30日
大傑作。『夜空ノムコウ』よろしく、「あの頃の未来に立てなかった人たち」の生活について。是枝さんは「生活」を撮るのが上手い作家さんだ。あの頃の未来と今の折り合いをどうつけるかという問題意識は、『海街』、『そして父になる』以上に普遍的でその射程は間違いなく広い。
『海よりもまだ深く』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月30日
阿部寛と真木よう子の高低差がやたら強調されている。そんな2人の顔が遊具のトンネルで初めて同じ高さになる。この2人が一緒になったのも、別れてしまったのもそのやりとりで何となく察せられてしまう瞬間が凄く良い。翌朝に子供も交えて同じ食卓に座る3人。
『海よりもまだ深く』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月30日
作品の質という観点でも、カレーうどん、人生ゲーム、太鼓の達人、モスとマック、演芸番組(なすなかにしというチョイス)とかの生活・文化が記録、描写されているという観点でも、長いスパンでの日本映画クラシックの作品になるといっても言い過ぎじゃないと思いたい。
『海よりもまだ深く』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年5月30日
他にも『別れの予感』をバックにした樹木希林の遺言。男と女の価値観のズレについての会話劇、コメディ。「アレ」という指示語。古舘寛治、高橋和也、中村ゆりの脇のさらに脇役の充実っぷり。カレーうどん、全編見所しかないです。
4位『エクス・マキナ』(アレックス・ガーランド)
『エクス・マキナ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
AIと人間の映画は『2001年~』『ブレードランナー』『チャッピー』『her』…と比較対象を上げればキリがない。けれども、AIと人間の境界線、3者の心理ゲーム、視覚的なデザイン、3つが完璧に噛み合った結果、先人達に全く引けを取らない完成度でした。
『エクス・マキナ』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
終盤、アリシア・ヴィキャンデルのある表情が滅茶苦茶美しく、同時にそこまでの流れを顧みると本当にゾクゾクッときた。あとこれってAI版『猿の惑星:創世記』みたい。本当、日本で劇場公開されて良かった良かった。
『この世界の片隅に』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
軒並みの高評価に楽しめるか不安でしたが、全くの杞憂でした。戦時中の生活や日常を描いている「だけなのに」、「だからこそ」面白いし新鮮。戦時中は悲惨で、苦しい生活の印象があるけれど、この映画の中の生活は楽しそうで、笑えて、ずっと観ていと思わせる魅力に溢れている。
『この世界の片隅に』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
何だかよくわからないまま結婚してしまった2人が、きちんと夫婦になっていく恋愛ものとしても良かった。同級生との一夜を過ごさせる周作さんとか、防空壕での件や妊娠したかも、となった後のご飯の量の可笑しさとか。
『この世界の片隅に』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
広島への核のシーンが特に煽ることなく突然やってくるのも、その唐突さこそが戦時中の日常だったからだろうな。
『永い言い訳』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年10月19日
身近な人の死で泣けないのは悪いことなのか。誰にも言えない自責と後悔に自縄自縛される男の話。西川美和さんの作品の中では一番好き。是枝さんの『そして父になる』『海よりもまだ深く』を思い出したりも。
『永い言い訳』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年10月19日
そんな『海よりもまだ深く』と妙に共通項が多い。妻と別れた小説家の中年男のお話。主な舞台が団地で、男の仕事上の相方が池松壮亮だったり。何より山崎裕さんの素晴らしい撮影っぷりが光る。ぜひ名画座で2本立てを。
『永い言い訳』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年10月27日
おかわりの2回目。海での深津絵里がフレームインしてくる瞬間は、分かっていてもハッとするなぁ。あの白い海はあらゆる映画の中でもトップクラスに美しい海だと思う。何より「幸せだ」と漏らしてしまう説得力が十二分に備わっている。
1位『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(リチャード・リンクレイター)
『エブリバディ・ウォンツ・サム‼︎』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月6日
リンクレイター新作はたった3日の青春映画。『アメリカン・スリープ・オーバー』に連なる、何でもない時間こその青春。不思議なもので大学の授業開始までの3日間を楽しげに描いているのに、希望や夢のような明るさより、空虚さや切なさが漂う。
『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月8日
何日か経って、終わることのない青春はつまらないのかもしれない、と思った。大概のことに、終わることの美学はありますが。
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というわけで、2016年の優勝はリンクレイター新作に。ただトップ5に関してはほぼ横一線。今年の基準はこのツイートが割とすべてのような気もします。
良い作品であることの1つに作品そのものだけでなく、自分の経験に基づいてアレコレ考えて、話したくなるということがあるなぁ。『何者』における「就活」であったり、『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』における「青春」であったり、『退屈な日々にさようならを』における「死」であったり。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年11月27日
ですので、観た直後のテンションよりも、観て1週間くらい経っても頭の中で反芻している映画が上位を占めました。例年以上に今の心情や状況が反映されたベスト5だなーと。
その他トップ30から漏れた次点として、4月~6月の日本映画の公開ラッシュほぼ全作品です。
『ディストラクション・ベイビーズ』『ヒメアノール』『葛城事件』『クリーピー』と各々のヤバい奴らっぷりが素晴らしい。それでいて全作品面白い。この短期間でこれだけ日本映画が豊作なの初めてかもしれない。しかも今週末からダメ押しと言わんばかりに白石和彌の『日本で一番悪い奴ら』!
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月22日
上げた作品以外にも
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2016年6月26日
『モヒカン故郷に帰る』
『アイアムアヒーロー』
『ディストラクション・ベイビーズ』
『ヒメアノ~ル』
『FAKE』
『団地』
『葛城事件』
『貞子vs伽椰子』
『日本で一番悪い奴ら』
とちょっとどうかしてるくらい日本映画の充実っぷりよ。
ひとまず今年はこの辺で、とにもかくにも2017年も面白い映画がいっぱいあるといいな!
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ワースト『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太)
演出や役者陣の演技に関しては全く申し分ないし、むしろ優秀な方だと思います。ただ、個々のエピソードに対しての違和感が拭えないまま最後まで行ってしまった感じ。ざっくり言えば、全編通じてデリカシーがないなぁと。
一つ挙げるなら、制服を隠された娘の対抗した方法(教室で制服が返ってくるまで下着姿になる)が100歩譲ってありだとして、その後の学校描写が一切ないのはズルいなぁと思う。個人的には問題解決どころか、余計に面倒なことになっているような気も…。
確かにお話としては「良い話」だし、実際劇場で泣く声もあったから、ある程度支持される分にはいいんですが、これが各映画賞で軒並み上位に来ることに猛烈な違和感を感じたので、敢えてのワーストとさせていただきます。
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【2016年 新作映画ベスト30】
1位『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(リチャード・リンクレイター)
2位『永い言い訳』(西川美和)
3位『この世界の片隅に』(片渕須直)
4位『エクス・マキナ』(アレックス・ガーランド)
5位『海よりもまだ深く』(是枝裕和)
6位『ドント・ブリーズ』(フェデ・アルバレス)
7位『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ)
8位『シン・ゴジラ』(庵野秀明)
9位『オデッセイ』(リドリー・スコット)
10位『サウルの息子』(ネメシュ・ラースロー)
11位『アメリカン・スリープオーバー』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル)
12位『クリーピー 偽りの隣人』(黒沢清)
13位『マネー・ショート 華麗なる大逆転』(アダム・マッケイ)
14位『父を探して』(アレ・アブレウ)
15位『リップヴァンウィンクルの花嫁』(岩井俊二)
16位『太陽』(入江悠)
17位『二重生活』(岸善幸)
18位『ちはやふる 上の句』(小泉徳宏)
19位『コロニア』(フローリアン・ガレンベルガー)
20位『ひそひそ星』(園子温)
21位『退屈な日々にさようならを』(今泉力哉)
22位『グランドフィナーレ』(パオロ・ソレンティーノ)
23位『オーバー・フェンス』(山下敦弘)
24位『ヤクザと憲法』(土方宏史)
25位『溺れるナイフ』(山戸結希)
26位『胸騒ぎのシチリア』(ルカ・グァダニーノ)
27位『ヴィクトリア』(セバスチャン・シッパー)
28位『ロブスター』(ヨルゴス・ランティモス)
29位『マジカル・ガール』(カルロス・ベルムト)
30位『何者』(三浦大輔)
ワースト『湯を沸かすほどの熱い愛』(中野量太)