2015年 新作映画ベスト30(15位〜1位+α)
2015年のうちに間に合いました、今年の映画ベスト15本です。
昨年のベストはこちら。
過去のベスト作品は以下のとおり。(過去記事へのリンクです。)
2014年『ゴーン・ガール』
2013年『ゼロ・グラビティ』
2012年『アルゴ』
2011年『ブラック・スワン』
2010年『(500)日のサマー』
【30位→16位】はこちら。
目次(結果だけ見たい、という方はこちら。)
=
【15位→1位】
15位『岸辺の旅』(黒沢清/日本・フランス合作)
『岸辺の旅』 生気を失った深津絵里が死者との旅を通じて生き返る話だと思った。毎度のことながら黒沢清は簡単に一線を越えていくなぁと。こんな変で綺麗な咀嚼しづらい映画こそリアルタイムで必見の一本だと思う。それとワンポイント登板の蒼井優は人を殺さんばかりの凄味だった。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 10月 11
14位『グリーン・インフェルノ』(イーライ・ロス/アメリカ・チリ合作)
『グリーン・インフェルノ』 イーライ・ロス新作。飛行機一機墜とすにも、普通には落ちてくれないし、後々授業の内容が反映されたり、構成に抜かりなし。にしても、食人族の演出はどうやったのだろう。子供にはどんな映画と説明したのか気になる。空撮のクレジットで緑が凄く映えていたのも印象的。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 12月 2
単なる食人映画ではなく、クライマックスでは「正しい」とは何かという根源的な問いを突きつけ、価値観に揺さぶりにくる。善人と悪人が繋がっていたとすれば、カメラが捉えているのは本当に世界の真実か。人を食べる文化が残る少数民族と少数民族を殺した土地で開発を行う企業。どちらの肩を持つべきか。最後の主人公の解答は妥協のようにも思えるけど、映画での体験を観た以上、あの落とし所は反論はできない。はたして、自分があの立場ならなんて解答するだろう。
マーベル・シネマティック・ユニバース フェイズ2のラスト。『アベンジャーズ』、『キャプテン・アメリカ』のシリアス路線も分かるけど、『アントマン』はとにかく明るいマーベルだったのが良かった。マイケル・ペーニャの間違いなく良い奴なんだけど、憎めない馬鹿さ加減が最高。一瞬で自由に物を拡大縮小できるアイテムの使い方や、アリさん大行進もフレッシュだった。ただ予告で最終決戦の場所は伏せておくべきだったかと、アレ知らないで観ていたらもっと高く評価していたかも。アントマン、今後のMCU作品に出演するけれど、他のシリアスな作品の世界観に溶け込むことはできるのだろうか。
来年の『シビル・ウォー』は期待してます。DCコミックスに関しては『スーサイド・スクワッド』も楽しみ。『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』は予告を観た限りでは…「おい、ザック・スナイダー反省したのか!?」と。
12位『おみおくりの作法』(ウベルト・パゾリーニ/イギリス・イタリア合作)
終盤まで良くも悪くも、カウリスマキっぽくて、お行儀のいい上品な映画だなという印象だったが、最後の最後でひっくり返された。それまでの描写の綿密さに驚き、振れ幅に動揺してしまった。ラストの解釈については、個人的には救いがなさすぎると思う。ただ割と映画自体は肯定的というか、前向きな捉え方だったのかなと。価値観を揺さぶられるという映画体験においては、かなり強烈だった。
11位『コングレス未来学会議』(アリ・フォルマン/イスラエル・ドイツ・ポーランド・ルクセンブルク・フランス・ベルギー合作)
スタニスワフ・レム原作の小説の映画化。前作『戦場でワルツを』同様に、アニメと実写が混在した映画。これも終盤の引っくり返し方が強烈。残酷な現実と、幸福な幻想のどちらを選び取るか。2つの選択肢のどちらかを選択した時に、零れ落ちるもう1つの選択肢について。その射程はあらゆる二項対立、選択において有効で、限りなく広い範囲に拓かれた映画だと思った。ちょっと『ゼイリブ』ぽさもある。ロビン・ライトが本人役ってのもね。
10位『グッド・ストライプス』(岨手由貴子/日本)
『グッド・ストライプス』 10年代の『ぐるりのこと』と言ったら褒めすぎだろうか。結婚することになって初めて知る互いの側面を受け容れていくことの愛おしさ、そうしてラストに交わされる視線の温かさ。特別なことなんて起きない映画だからこそ、描けることがあると思えると何故だか嬉しくなった。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 6月 18
2015年日本の恋愛映画の間違いなく代表作。しっかりと地に足がついて、ささやかな日常を肯定してくれる恋愛映画は絶対に必要だと思う。来年は『知らない、ふたり』があるので安泰かな。
9位『私の少女』(チョン・ジュリ/韓国)
『私の少女』 田舎での少女との心暖まる出会いと言えば、そういうお話なんだけど、そこは韓国映画の特有の嫌らしい追い詰め方があって、一筋縄ではいかせてくれない。罪を知りながらも、それを匿う瞬間、ひいてはその覚悟を決めた瞬間に、強さとは一概に言い切ることのできない何かが宿る。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 5月 2
8位『フレンチアルプスで起きたこと』(リューベン・オストルンド/スウェーデン・デンマーク・フランス・ノルウェー合作)
『フレンチアルプスで起きたこと』 雪崩から妻子を置いて逃げた夫の話。”男らしさ”という名の正論で殴り続けられる、男からすれば悪夢のような映画。登場人物が決して感情的にならず、理詰めで議論するのがヨーロッパぽい。最後まで緊張感を絶やさない、不穏な演出・音楽の使い方が良かった。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 10月 2
7位『ジュラシック・ワールド』(コリン・トレボロウ/アメリカ)
アメリカ映画最高!と叫びたくなる楽しさ。社長のヘリコプターが墜落する件や、キスの件、アシスタントの顛末とか、普通のシーンを敢えて過剰にすることで笑いにするセンスが良いなと思った。ラスト二人が光に向かって歩いて行くやり過ぎ感も大好き。細かいところを突けば話の粗は見つかるけど、その過剰さ、粗が映画のチャーミングさになって、かえって自分には魅力的だった。また、クライマックスに「アイツ」が登場するタイミングで、往年の名レスラーがリングに上がるような高揚感があった。いざ戦い始めると、今の技術でないと出来ない見せ方をしていて、ちゃんと見せ方をアップデートしていたのは流石。単なるオマージュだらけのリブートものではなく、「今」の視座がきちんと組み込まれているかは重要なポイント。
水曜日のカンパネラ コムアイさんが本作を観て「(アメリカ人と)分かち合えないなと思いましたね。ちょー楽しかったけど。」とコメントしていて、何となく分かるなーとも。
6位『草原の実験』(アレクサンドル・コット/ロシア)
『草原の実験』 美しい世界の終末を描いたおとぎ話かと思いきや、ラストで強烈な一撃を放つ傑作。セリフを一切排し、全編スクショしたくなる画の美しさ。色彩の鮮やかさ、構図にシンメトリー・直線が多用されることから、世界の終末とは対極にあるW・アンダーソンのようなポップさすら観て取れる。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 10月 2
5位『野火』(塚本晋也/日本)
『野火』 冒頭からいきなり観客を不条理な状況に投げ出し、後はひたすら地獄巡りのシーンが続く。デジタル撮影の生々しさが、そのまま戦場の毒々しさを反映しているよう。敵兵がほとんど登場せず、何と戦っているのか分からなくなることが、戦争の本質的な所を突いている気がした。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 10月 2
4位『ハッピーアワー』(濱口竜介/日本)
30代後半の4人の女性の関係性を描いた作品。5時間超えの3部作という大長編。
真正面からの対話、身体の接触、乗り物、夜明け、恋愛喜劇としての側面、劇中の創作を実際の作者に演じさせる(今回は小説の朗読)構造、ワークショップや朗読会などを長時間見せる手法と、過去作の要素が集約されていて濱口監督の集大成とも思えた。
劇中2回ある打ち上げのシーンをはじめとして、とにかく会話のシーンが凄い。「会話(言葉のやり取りだけでなく、視線や振る舞いも含む)」というコミュニケーションを丁寧に突き詰めた結果、その残酷さ、滑稽さ、相手への不信感という深淵にたどり着く。それらがむき出しになる過程がとにかくスリリング。1度既存の会話を分解し、その要素を分析し、脚本に再構築、演出・編集を行う途方もない作業量の痕跡が見えて、どれだけ会話について、コミュニケーションについて考え抜いたのだろうかと気が遠くなる。研究者と作家のトークショーは彼らが同じものについて語っているようには全く思えなかった。
ただ、決してシリアスになりすぎることはなくて、恋愛喜劇、としての側面も併せ持っている。あくまでも軸は4人の女性だけど、彼女らと対をなす4人の男性(サラリーマン、編集者、研究者、アーティスト)がまぁ素晴らしい。男として自分も彼らのように意思疎通ができていないのではないかと不安になった。
上映時間が商業的に適切かというと難しいけれど、少なくとも体感時間は全く長くなかった。3部構成が起承転結の「起」「承」「転」に対応しているように感じたので、「結」にあたる第4部を、8人の男女のこの先の人生を観てみたいと思った。
3位『はじまりのうた』(ジョン・カーニー/アメリカ)
音楽映画は楽しくあって欲しいし、前向きな着地の方が断然好み。『セッション』をはじめとした音楽映画が今年は特に多く、そんな中で『はじまりのうた』は音楽の楽しさに溢れていて、後味の良さは群を抜いていた。ニューヨークのフィールドレコーディング、踊ったらダメなパーティーのシーンは本当に幸せな気持ちになる。安易にキーラ・ナイトレイとマーク・ラファロが恋仲にならないのも良い。ベストサントラ賞も。
2位『キングスマン』(マシュー・ヴォーン/イギリス)
『キングスマン』 もう大好き!最高!マシュー・ボーンが「オレが観たいスパイ映画はこれだ」と言わんばかりにやりたい放題。ガゼルとマーリン推しです。世界を救えば、後ろの穴でヤレるのか!
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 10月 2
今年はとにかくスパイ映画の当たり年だったのは、言うまでもなし。最も好きだったのは『キングスマン』。3回劇場で観た。スーツを着る、傘を持つという当たり前の日常に高揚感を与えられる映画はそうそうないかと。「Manners Maketh Man.」は今年の映画流行語大賞かな。こちらもイベント的な上映が実施されていて、『マッドマックス』ほどではないけれど、お祭りになっている模様。
続編の製作が決定しているとのことで、コリン・ファースはどういう形であれ絶対に出演して欲しい。要望を言えば、若かりしコリン・ファースと現代のタロン・エガートンの物語が同時並行する『ゴッドファーザー PART II』方式がいいな。
1位『恋人たち』(橋口亮輔/日本)
冒頭の一人語りからして、既にタダものではない作品の雰囲気があった。自転車に二人乗りして鶏を追いかけるシーンでようやく一息つけて、それまでの閉塞感で観ている分には結構しんどかった。役所でのやり取り、夫婦の色気の欠片もない情事、妹を亡くした姉の独白、弁護士からの「傷つきたくないんで」の一言と、日常でのコミュニケーションの残酷さをこれでもかと見せられる。その一方で、コミュニケーションの滑稽さが笑いとなるシーンもある。コミュニケーションへの不信、おかしみ、その残酷さを浮き彫りにする点では、『ハッピーアワー』と通じ合う部分があるように思えた。
本当に気持ちを分かり合いたい人と、分かり合えているのだろうかという不安、その存在すら不在故の絶望。妻を亡くした夫が職場の先輩に対して独白するシーン、それまでのカメラの動きではなかった、急速に顔に向かうクローズアップの際、心を直でギュッと握られたような気がした。安易に死ぬこともできない世界で、それでも、微かな希望ともつかない何かを見つけ、生きていくことをこの映画は肯定する。食べて、笑って、もっとあなたと話したいという旨のセリフに胸がいっぱいになった。
また「今」を捉えているという観点でも、長いスパンで重要な作品になるのではないだろうか。『ぐるりのこと』では、90年代の空気感を00年代に再現した。本作は2011年の3.11と2020年の東京オリンピックの狭間、その転換期にあたる2015年の日本の空気感、東京の風景をリアルタイムで切り取った橋口監督の最高傑作ではないかと思う。
=
【次点&ワースト3】
<次点10本(鑑賞順)>
『薄氷の殺人』(ディアオ・イーナン)
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(ジョン・ファヴロー)
『フォックスキャッチャー』(ベネット・ミラー)
『ローリング』(冨永昌敬)
『彼は秘密の女ともだち』(フランソワ・オゾン)
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(クリストファー・マッカリー)
『ディアーディアー』(菊地健雄)
『裁かれるは善人のみ』(アンドレイ・ズビャギンツェフ)
『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』(セバスチャン・デデベール)
『母と暮らせば』(山田洋次)
<ワースト3>
1位『映画 みんな!エスパーだよ!』(園子温)
2位『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』(アラン・テイラー)
3位『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』(樋口真嗣)
観客、出演者をはじめとする関係者、双方が得をしない作品だったから。
=
【雑感など…】
分母は約140作品。少なくとも自分の観測範囲では、2010年代で最も作品に恵まれた年だったのではないでしょうか。
上げていないだけで、ゴダール、ティム・バートン、北野武、イーストウッド、ポール・トーマス・アンダーソン、グザヴィエ・ドラン、ニール・ブロムカンプ、細田守、原恵一、ダルテンヌ兄弟、ロイ・アンダーソン、侯孝賢、シャマラン、オリヴェイラなど。ピクサー、007、SWの新作も。
仕事などの兼ね合いも考えると、この辺が鑑賞本数の限界と感じた年でもありました。
評判にはなったけれど、見逃した作品はこんな所です。
『くちびるに歌を』『パレードへようこそ』『駆込み女と駆出し男』『グローリー/明日への行進』『雪の轍』『ラブ&ピース』『約束の地』『アリスのままで』『共犯』『ルック・オブ・サイレンス』『真珠のボタン』『光のノスタルジア』
以下、今年の映画を観ての独り言です。
<2015年のキーワードは「世界は残酷…」>
互いに相容れない価値観、全てを押しつぶす圧倒的な力、単純化出来ない社会のシステム、コミュニケーションの齟齬から生じるすれ違い、いつまでも同じ場所にはとどまることを許さない時間、そして、死。規模は様々ですが、あらゆる場面で個人の意思では抗いようのない力が存在し、それらは世界の残酷さをありありと反映しています。
形は違えど、映画はそれらの断片を提示してきます。その残酷な世界に対して、どう折り合いをつけるか、どんな態度をとるかを提示する映画が上位にきたのかなという印象。
その中でも1位の『恋人たち』は残酷な世界に対峙する今の日本の個人に焦点を絞り、深い深い絶望の中で微かな光を見つけ、生きていくことを選び取る過程を強い意志で示してくれました。前述の『進撃の巨人』の台詞と、本作のコピーをお借りして、個人的な今年のキーワードは
「世界は残酷…それでも人は、生きていく」
といった感じでしょうか。
<求められる女らしさ/男らしさ>
『マッドマックス』、『スター・ウォーズ』で意志を持った女性が主人公の作品が目立ち、強い女性像を世界が求めているのかしらと思いました。特に『スター・ウォーズ』は、レイは凛とした格好良さがあるのに、フィンはボンクラ、カイロ・レンは中二と男の肩身がせまいなぁと思いました。EP8、9での見せ場は当然あるとは思いますが。
男らしさで言うと、『フレンチアルプスで起きたこと』は決定的。男としての尊厳を失った男はどうなるのかを理路整然と描いていて、「男として期待されるもの」の重圧を堪えようとする男達。そして、重圧に耐えきれなくなった時、堪えていることが白日のもとに晒された時の恐ろしさを示した、男には戦慄のホラー映画でした。個人的に「男性学」というものに興味が湧いたタイミングだったということもありますが。
ひとまず言えることは、頑張ろう男!
<映画周辺の「祭り」>
『スター・ウォーズ』の公開はお祭りでした。初めてリアルタイムに劇場で『スター・ウォーズ』を観たという経験は、後にも先にも中々得難い経験でした。やっぱりあのテーマを劇場で聴くと、「俺は今『スター・ウォーズ』を観ている!」と当たり前のことに感激しました。そこまでシリーズに思い入れがあるわけではないので、リアルタイム世代の感動は比べものにならないのでしょう。劇場新作で拍手が起こることが凄いことですもんね。
少なくとも『スター・ウォーズ』は2020年まで毎年新作が発表されるようなので、この盛り上がりが継続してくれればいいなと。アメコミ関連でいうと、Marvel、DCコミックスのシリーズも2020年までの計画は明らかになっていて、2020年まではこの三つ巴になるのでしょう。それまでは新作公開毎にお祭りになれば良いなと思います。『スター・ウォーズ』とMarvelは同じディズニー傘下ですけどね。アメリカと日本のファン層だけでなく、今回の『スター・ウォーズ』のように、一般層に届いて爆発的な祭りになることを期待しています。
『キングスマン』のように、単体でもコスプレ上映、絶叫上映が組まれる作品があったのも良かったと思います。来年以降も大勢の人を動かす熱の持った作品が新たに生まれて欲しいです。
方や日本映画は「祭り」というと、ネット界隈ではあまりよろしくないイメージ。『進撃の巨人』や『ギャラクシー街道』の悪い方の祭りが悪目立ちしていたような気もします。twitterでは映画界隈には良い評判は届いても、一定層止まりな印象。良い評判が私の目につかない所で出回っている可能性もありますが。不思議なのが映画やテレビは悪評はすぐ広まるのに、音楽、小説はあまり悪評は広がりづらい、この違いは何なのでしょうか。
<デジタル技術とアナログ技術>
タマフルで放送作家・高橋洋二さんが言及されていた「CGとはっきり分かる映像がが古臭く感じる問題」。『スター・ウォーズ学』(新潮社/清水節、柴尾英令 著)で言及されていた「『スター・ウォーズ』でのJ・Jによるアナログ手法」など、ここに来て若干のアナログ回帰の流れがきているようです。確かに『ジュピター』がいまいちと感じたのは、あまりにもCGバリバリの世界観というのはあったかもしれません。(話自体にも若干の古臭さは否めないですが…)
『バットマン vs スーパーマン』の予告を観て「ザック・スナイダー反省してねぇな。」と感じたのは、そのトレンドには逆行した、CG感丸出しの映像だったということがあるのかもしれません。ザック・スナイダーの映画は「重力」が感じられないのが悪い方向にも良い方向にも出ているような気がします。(『エンジェル・ウォーズ』は大好きです。)実際は蓋を開けてみないとわかりませんが…。
ともかく10年代後半のキーワードにデジタル技術とアナログ技術へのスタンスが、特に大作では、評価の分水領になることは間違いなさそうです。
<配信・ビデオスルーになる作品>
前述のタマフルPodcastでスクリプトドクター・三宅隆太さんが年間ベストを発表されていましたが、そのほとんどが配信・ビデオスルーの海外作品でした。また、音楽・映画ジャーナリスト 宇野維正さんが中堅監督の作品ですら配信・ビデオスルーになっている現状を指摘されていました。
劇場公開されている洋画の本数は10年代においては毎年増加しているので(おそらく今年も増加?)、世界全体でも増加傾向にあることが推測されます。しかし、限りある時間内で鑑賞本数を増やし、シーン全体を追うことは不可能です。かといって、ハズレはあまり引きたくないのが本心。
本当に良い作品と巡り合うために、Netflixなどのサブスクリプションを始めとするインフラの整備や、信頼できるスルー作品の推薦人、メディアを見つけることが急務のようです。今年はIndieTokyoさんやGucchi's Free School.さんのような、未公開作品を自主的に配給・上映を行う団体も出てきました。このような動きがあれば、応援の意味を込めて積極的に足を運ぶことも大事なのかもしれません。
もちろん、一個人としてはアンテナを国内の上映作品のみならず、アンテナを世界レベルに向ける必要があります。結局、面白い映画は自分で選び取らなければいけない、という当たり前の話なのですが。
ダラダラと書いてしまいましたが、とにかく来年も面白い映画がいっぱいあるといいな!
=
【2015年 新作映画ベスト30】
1位『恋人たち』(橋口亮輔)
2位『キングスマン』(マシュー・ヴォーン)
3位『はじまりのうた』(ジョン・カーニー)
4位『ハッピーアワー』(濱口竜介)
5位『野火』(塚本晋也)
6位『草原の実験』(アレクサンドル・コット)
7位『ジュラシック・ワールド』(コリン・トレボロウ)
8位『フレンチアルプスで起きたこと』(リューベン・オストルンド)
9位『私の少女』(チョン・ジュリ)
10位『グッド・ストライプス』(岨手由貴子)
11位『コングレス未来学会議』(アリ・フォルマン)
12位『おみおくりの作法』(ウベルト・パゾリーニ)
13位『アントマン』(ペイトン・リード)
14位『グリーン・インフェルノ』(イーライ・ロス)
15位『岸辺の旅』(黒沢清)
16位『スナップ』(コンデート・ジャトゥランラッサミー)
17位『海街diary』(是枝裕和)
18位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ジョージ・ミラー)
19位『ネイバーズ』(ニコラス・ストーラー)
20位『ベテラン』(リュ・スンワン)
21位『オスロ、8月31日』(ヨアキム・トリアー)
22位『イマジン』(アンジェイ・ヤキモフスキ)
23位『EDEN/エデン』(ミア・ハンセン=ラブ)
24位『ナイトクローラー』(ダン・ギルロイ)
25位『きみはいい子』(呉美保)
26位『パロアルト・ストーリー』(ジア・コッポラ)
27位『ザ・トライブ』(ミロスラブ・スラボシュピツキー)
28位『THE COCKPIT』(三宅唱)
29位『息を殺して』(五十嵐耕平)
30位『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)
<2015年 次点10本(鑑賞順)>
『薄氷の殺人』(ディアオ・イーナン)
『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』(ジョン・ファヴロー)
『フォックスキャッチャー』(ベネット・ミラー)
『ローリング』(冨永昌敬)
『彼は秘密の女ともだち』(フランソワ・オゾン)
『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』(クリストファー・マッカリー)
『ディアーディアー』(菊地健雄)
『裁かれるは善人のみ』(アンドレイ・ズビャギンツェフ)
『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』(セバスチャン・デデベール)
『母と暮らせば』(山田洋次)
<2015年 ワースト3>
1位『映画 みんな!エスパーだよ!』(園子温)
2位『ターミネーター: 新起動/ジェニシス』(アラン・テイラー)
3位『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』(樋口真嗣)