2015年 新作映画ベスト30(30位〜16位)
年間まとめシリーズもラスト、映画編です。
昨年のベストはこちら。
2015年に劇場鑑賞した映画から今年は30本選びました。
観た当時のtwitterに書いた感想も載せていますが、今と感じていることが変わっていたり映画もあるので、何にしろ感想は生モノだなと。スピードと質は別問題ですね。
ちなみに、東京国際映画祭で観た『知らない、ふたり』『俳優 亀岡拓次』は公開年が2016年なので来年の年間ベストに入れます。2本とも日本映画の質の高さがちゃんと反映されていて、オススメです。
総評、雑感などは後編でまとめて。
過去のベスト作品は以下のとおり。(過去記事へのリンクです。)
2014年『ゴーン・ガール』
2013年『ゼロ・グラビティ』
2012年『アルゴ』
2011年『ブラック・スワン』
2010年『(500)日のサマー』
結果のみなら、こちらから。
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30位『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ/アメリカ)
『バードマン』 エマニュエル・ルベツキのワンカット撮影とアントニオ・サンチェスの劇伴で自意識問題を語ると、こんなにもカッコよく様式美すら感じる映画が出来上がるのか!この座組の時点で思い付けなかったのが悔しい!
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 4月 13
振り返ると、これがワンカットの一つの到達点だったのかなという印象。140分全編ワンカットの『ヴィクトリア』や、ボクシング丸々1試合をワンカットでやってしまった『クリード チャンプを継ぐ男』が出てきて、ただ長いだけでのワンカットでは、あまり驚けなくなってしまった。来年公開の『レヴェナント:蘇えりし者』も撮影監督はエマニュエル・ルベツキなので、『バードマン』からどうアップデートしてくるか楽しみ。
29位『息を殺して』(五十嵐耕平/日本)
東京藝大の修了作品。年末のゴミ処理場という設定がまず魅力的。年越、ダンス、軍人、死者の記憶、要素だけ並べるとアンゲロプロスの『狩人』みたいだなと思った。サバゲーのシーンで戦争映画の緊張感が一気に出てきて、遊びが本物に変わる未来がそう遠くないことを予感させる。谷口蘭さんが良い。
28位『THE COCKPIT』(三宅唱/日本)
『THE COCKPIT』 ほぼ同一のワンショットで音楽が作られる単純作業の繰り返しが映されているだけなのに、どうしてこんなにも面白いんだろうか。普段何気なく聞いてる全ての音楽がこうした過程を経て作られているとしたら、聞く側のテンションも全く変わっちゃうな。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 6月 18
27位『ザ・トライブ』(ミロスラブ・スラボシュピツキー/ウクライナ)
『ザ・トライブ』 字幕や台詞をあえて排除したのではなくて、最初から必要ない映画だった。ラストシーンは勿論、ふいに車に轢かれるシーンが最も鮮烈。長いワンカットが続く中できちんとカットの最後に何かが起きる映画は良い!
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 4月 23
26位『パロアルト・ストーリー』(ジア・コッポラ/アメリカ)
『パロアルト・ストーリー』 人生において、特別な瞬間を、ここではないどこかを求めて、あがくことが許されるのが10代。だとしたら、この映画の登場人物たちにそんな焦ることはないよと思ってしまって、そう思った自分が少し虚しくもあり。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 6月 18
25位『きみはいい子』(呉美保/日本)
呉美保さんの作品を劇場で鑑賞したのは今作が初めて。日常の地続きにある不穏な何かについての群像劇。役者さんが素晴らしくて、高良健吾は若い俳優さんの中だと抜きん出ている印象を受けた。冒頭の延々と続く虐待シーン、子供達がそれぞれ与えられた「宿題」をどうしたか答えるシーンが良かった。
映画の最初から最後まで、バッキバキに目がキマっているジェイク・ギレンホールに尽きる。表情は豊かなんだけど、目だけは動かず、決して観客にその心の内を読み取らせない演技が凄い。ある種の「正しさ」を突き詰めると、違う種類の「正しさ」を打ち破る。その一線を越える瞬間がユーモアとホラーの紙一重でせめぎ合い、結果エンターテイメントとして昇華しているところが良かった。
23位『EDEN/エデン』(ミア・ハンセン=ラブ/フランス)
DJとして若くして成功を掴んだものの、その成功の亡霊に取り憑かれてしまった男の話。周囲の人間や環境は変わっていくのに、過去の成功に捉われ全く変わることができない、大人になりきれない主人公がやるせない。一瞬の輝きを糧にする人生は切ない、だからこそ、変わり続けるために走り続けなければ。音楽映画としても楽しめる。サントラはオススメ。
22位『イマジン』(アンジェイ・ヤキモフスキ/ポーランド・ポルトガル・フランス・イギリス合作)
『イマジン』 ただただ街を歩くだけのシーンが面白い映画にハズレなし説。登場人物たちが盲目であることを活かした抑制の効いた見せない演出からラストシーンまで完璧でしょう。それと街の音にスポットが当たるからこそ、映画を観る前と後で普段の景色が変わったように思えるのも良い映画の証拠。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 5月 2
21位『オスロ、8月31日』(ヨアキム・トリアー/ノルウェー)
トーキョーノーザンライツフェスティバル2015にて鑑賞。薬物依存の主人公が故郷で昔の友人や恋人を訪ねて回る。何か大きな事件が起きるわけではないが、目に見えない不安感、閉塞感が終始漂っていて、ずっと息苦しかった。ラストシーンの後に映し出される街の実景ショットがより映画のビターさを際立たせる。自転車に二人乗りして、深夜の道路をゆったりと進みながら消火器を噴射するシーンが好き。監督のヨアキム・トリアーはラース・フォン・トリアーの甥。新作『Louder Than Bombs』(ポスターが最高!)の日本公開求む。
20位『ベテラン』(リュ・スンワン/韓国)
お話は、一介の警察 VS マスコミや警察をカネで操る大企業の御曹司というベタっちゃベタな構図。しかし、個々のキャラクターの立ち方、テンポの良いアクション、ちゃんと笑えるギャグ。小細工なしで娯楽映画ど真ん中をやりきっているからこそ、ベタの強さが際立つ。悪役が120%クズなので、勧善懲悪モノのカタルシスも十分。クライマックスの市街地でのカーチェイスや、繁華街での格闘シーンでは、こんなのやられたら日本のアクション映画はそりゃ韓国には勝てないよと思わされた。
19位『ネイバーズ』(ニコラス・ストーラー/アメリカ)
DVD発売記念に1週間限定で劇場公開。評判を聞いてDVDで観ました。セス・ローゲン夫妻の隣に、ザック・エフロン率いる大学生集団が引っ越してきて…というお話。アメリカのコメディは下ネタの割合が多いけれど、そこを抜きにしても抜群に面白かった。ペニバンで商売する件と、オフィスの椅子が吹っ飛ぶ件で超笑った。『22ジャンプストリート』も面白かったし(エンドクレジットは今年ベスト級!)、DVDスルーと言えども侮れない作品が多過ぎる。『TED2』のオープニングも良かった。
18位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ジョージ・ミラー/アメリカ)
字幕2D、IMAX3D、MX4Dで3回鑑賞。4DXは映画以外の情報量が多くなるので、初見時や映画を純粋に楽しみたいという人にはあまりオススメしない。やっぱりIMAX派。
2回目までは画面の情報量に圧倒されてあっという間に映画が終わり、もはや観たという感じがしなかった。いろいろ情報を仕込んでの3回目で、ようやく画面のディテールに目が行くように。それだけの密度ということだと思う。キャラクターの裏設定も他の映画とは比べものにならないほどだし。
立川の極音上映や、新文芸坐のカウントダウン絶叫上映で未だにお祭り感が衰えないのは凄いと思う。一連のマッドマックス祭りで最も印象に残った言葉は、”マッドマックスは観るものではなく、キメるもの”
『海街diary』 若干の描写不足感は否めないけれど、その街の人々の群像劇としては十分すぎる良作。季節の移り変わりや、美味しそうな食事、鎌倉の街並みと海、微かな性の匂いと、登場人物たちの「生活」があって、その細やかさが映画の土台を固める豊かさとしてしっかり機能している。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 6月 18
日本版のポスターよりこっちの国際版のポスターの方が断然良かったのに、という独り言。是枝監督は早くも新作の公開が発表、樹木希林無双が再び観られるのではないかと期待しています。
16位『スナップ』(コンデート・ジャトゥランラッサミー/タイ)
『スナップ』 TIFF、10本目。メチャクチャ良かった!丁寧なショットの積み重ねで、とても上品で奥ゆかしい恋愛映画だった。青春時代の記憶や写真など普遍的なモチーフもありつつ、タイの政治的状況やInstagramの「今」である必然性を隠し味程度に盛り込むバランス感覚がお見事。
— なぎ (@nagi_x_nagi) 2015, 10月 27
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2015年 新作映画【30位〜16位】
16位『スナップ』(コンデート・ジャトゥランラッサミー)
17位『海街diary』(是枝裕和)
18位『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(ジョージ・ミラー)
19位『ネイバーズ』(ニコラス・ストーラー)
20位『ベテラン』(リュ・スンワン)
21位『オスロ、8月31日』(ヨアキム・トリアー)
22位『イマジン』(アンジェイ・ヤキモフスキ)
23位『EDEN/エデン』(ミア・ハンセン=ラブ)
24位『ナイトクローラー』(ダン・ギルロイ)
25位『きみはいい子』(呉美保)
26位『パロアルト・ストーリー』(ジア・コッポラ)
27位『ザ・トライブ』(ミロスラブ・スラボシュピツキー)
28位『THE COCKPIT』(三宅唱)
29位『息を殺して』(五十嵐耕平)
30位『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ)